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九龍城を回想する

イギリスから中国に返還される前の香港は「猥雑」「欲望」「無法」が特徴で、街中には日本より明瞭な性産業がシステム化され、それもあってか世界中から若者が半移住し、今の洗練された金融都市よりもっと貿易の抜け道を情報交換する呈が昼夜問わず露出されていました。

それでも、会うヒト皆があそこには行ってはいけない、と念を押されたのが九龍城です。しかし香港在住者ではないツーリスト、ほんでまた若かった僕には今より体力、機敏さ、暗がりでの視力はあったのです。

事前に調べた九龍城の40年前の有意な情報には①ガイドマップとか何言うてんね。②何階という概念はない。③治外法権である。④誘拐、人身売買のマーケットが複数ある。⑤四肢を切断された女性、俗に言われる「ダルマ」が商品になっている。⑥世界中の麻薬、不法薬物で入手出来ないものはない。⑦組織に損失を与えた人間は絶え間なく処刑されてミンチになり、人肉饅頭になるか豚の餌になる。。。

これ、後にハリウッドの名作映画となったレクター・ハンニバルまんまちゃいまっか、、、でも、そこはクラリス役のジョディー・フォスター成りきりですよ(すいません、羊たちの沈黙を観たヒトには伝わる雰囲気でしょ、これ)。入念に自分が突入した導線を記憶し、徐々に暗がりの配置、傾向を把握して映画とは違ってこれ以上はマズいでしょ、ってとこが来たら引き返します(当然です、ドアあけてミンチを見ちゃったらアカン。ダルマだって極めてアカン)。

これ、物語りを盛ってはいません。ズブな素人が行った武勇伝とはこんなもんです。帰国して医学部の学生に戻り、医者になってもう35年。でも、あの湿って滑りそうな路面と壁に囲まれた静寂、そして不規則に叫ばれる命の懇願と断末魔の響き。もうドアすらそこにはない。

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